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「ほんと、お前はからかい甲斐があるよ」
「違うでしょ係長。いじめ甲斐でしょう」
「バカやろう、いじめやパワハラなんて俺がするわけないだろう。これは、俺とこいつの戯れの一つなんだよ」
「まあ、確かに怒ったりしないですもんね。案外、楽しんでいるのかも」
「違いない。わはははは」
受け入れている訳ないだろう。楽しんでいる訳ないだろう。でも、そんな否定的な感情は頭で理論的には描けても、感情として表出することができない。
怒りでも後悔でも、不安でもないモヤモヤした気持ちが、隙間だらけになった俺の心を埋め尽くし、俺を支配していく。
どこをどう歩いてきたかは覚えていないが、俺はまたあの階段を上っている。
「いらっしゃいませ」
「俺の心にあるこのモヤモヤした感情を買い取ってくれ。今すぐに」
「わかりました。では、買い取らせて頂く感情を確認しますね」
いつものように、タブレットとペンを渡してきた。
「今の心のなかにある感情と向き合いながら、思いつく図形を描いてみてください」
俺はモヤモヤする心の中に思いを馳せながら、今の感情がどんな形になるのかイメージをして画面上にペンを走らせた。
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