レンタル人形

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レンタル人形

「なぁ杏珠(あんじゅ)、レンタル人形って知ってる?」 「何それ? 知らん。何、またオカルト? やめてくれん?」 班で机をくっつけて食べる、給食の時間。唐突に歩美(あゆみ)が身を乗り出して訊いてきた。 歩美は幼稚園の頃からの腐れ縁。小学校では4回は同じクラスになったし、中学でも2年連続同じクラスだ。来年こそは別れたい。 その理由は、歩美がオカルト好きだから。オカルトが苦手なわたしは、歩美がことあるごとに怪談話をしてくるのが嫌だった。 「面白いやん、怖い話! わくわくするやろ?」 「せーへんから言ってんねん!」 「まぁまぁ、聞くだけ聞いてや」 「何々? 面白い話? 聞きたい聞きたい!」 聞くだけ聞いたら怖いやろ! そう言い返す前に、同じ班の真斗(まなと)が会話に混ざってきた。 真斗の興味津々な態度に、歩美は嬉々として語り出す。 「あんな、レンタル人形ってのは、言葉通り人形を借りれるサービスやねんけど。その人形に自分の代わりにして欲しいことを言うと、人形が代わりにやってくれんねんて」 「たとえば? 宿題やって、とかでもいいんか?」 「たぶんな。家事を代わって欲しいとか、ゲームの報酬ゲットを任せるとか」 ここまでは別に怖い話じゃないよね。 いつの間にか、真斗以外の班メンバーも歩美の話を聞き入っている。 というか、何でわたしは歩美の話を聞いてるんだ……。でも耳を塞いでいたら、時間内にご飯食べれないしなぁ。
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