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ーー
「杏珠、今日どうしたん? いつも英語の宿題5カ所くらいは空欄やのに、今日は全部埋まってたな」
「しかも全問正解やったよな!」
移動教室の英語の時間が終わり、自分の教室に戻っている廊下の途中。歩美が不思議そうに訊いてきた。真斗も驚いたようにわたしを見てくる。
2人の言う通り、宿題は空欄が埋まっていただけでなく、間違っていた問題も解き直されていた。クラスでわたしだけが全問正解だった。
「たまたま、やろ。まぐれ、うん」
「……ふーん? 杏珠がそう言うなら、まぁいいけど。あー、お腹空いた。なんでまだ3時間目なん?」
「それはな、次が4時間目やからや」
「あはは! 何それ、意味分からん」
2人はそれ以上、宿題の件について踏み込んで訊いてくることはなかった。
ーー
家に帰って自分の部屋に入ると、妹のベッドに例の人形が転がっていた。今日も借りてきたのか。
「あ、おかえり~」
トイレにでも行っていたのか、濡れたままの手をスカートの後ろで拭きながら部屋に入ってきた。ちゃんとタオルで拭きなさいよ。
「その人形、今日も借りて来たん?」
「うん! 先生がな、この人形はあるお店から借りてて、お店に返すまでの間やったら、杏莉が持っててもいいって言ってくれてん!」
あるお店から借りてる? この人形を?
まさか、歩美が言ってたレンタル人形……。やっぱり、昨日宿題をやってくれたのはこの人形?
真相を確かめるために、杏莉がお風呂に入っている間にお願い事をした。
「わたしの代わりに、数学の宿題をやってください」
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