レンタル人形

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ーー 次の日。数学のワークが机に開かれていた。これはわたしが昨日出して寝たけれど、その時はちゃんと閉じて出していた。 恐る恐るワークを手に取る。 宿題の範囲がちゃんと終わっているだけでなく、採点までしてくれている。もちろん全問正解で。 杏莉のベッドを見ると、足元に蹴飛ばされていた人形と目があった。 「やっぱり、レンタル人形なんや」 不思議と、歩美から聞いたときほどの怖さはなかった。むしろ、便利だと思った。 「わたしの代わりに国語の宿題をやってください」 「わたしの代わりに理科の宿題をやってください」 「わたしの代わりに部屋の掃除をしてください」 「わたしの代わりに……」 お願いするたびに、その人形が完璧にすべてをこなしてくれた。 気付けば怖さなんて欠片もなく、むしろ次は何をお願いしようかと考えていた。 「杏珠、お風呂入っといで」 「えー、今いいとこやのに」 「その番組、録画もしてるんやろ?」 「まぁ、そうやけど……」 面倒くさい。テレビを見たい。録画はしているけど、リアルタイムでも見たい。 人形にお風呂に入ってもらうのはダメなんだっけ。 仕方なく、テレビを消してお風呂に入ることにした。
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