レンタル人形

8/9
前へ
/9ページ
次へ
(待って! 杏珠はわたし! それに、宿題とか掃除しか頼んでへん! お風呂もご飯も自分で……!) 『生きることに直結するお願いはしたらあかんねんて。あとは、お願いを何回もし続けるとかな』 歩美の言葉が脳裏をよぎる。お願いを何回も……。確かに、何回もしていた記憶はある。 さっきまで人形だったはずの”わたし”は、机に向かって鼻歌を歌いながら宿題をしていた。 ーー 「杏莉ー、今日は人形返さなあかん日やろ? 忘れんと持っといでやー」 「わかってるー!」 杏莉は、ベッドに転がっていた人形のわたしを持って家を出た。 ”わたし”は”杏珠”になり代わって学校へ向かった。 「杏莉ちゃんおはよう」 「先生おはようございます。お人形さん、かわいかった! ありがとうございました」 杏莉は無邪気に笑ってわたしを先生に渡す。 「丁寧に扱ってくれてありがとうね。……あれ? なんか前と変わってる……?」 先生はジッとわたしを見ていたけれど、気のせいか、と言って目を逸らした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加