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(待って! 杏珠はわたし! それに、宿題とか掃除しか頼んでへん! お風呂もご飯も自分で……!)
『生きることに直結するお願いはしたらあかんねんて。あとは、お願いを何回もし続けるとかな』
歩美の言葉が脳裏をよぎる。お願いを何回も……。確かに、何回もしていた記憶はある。
さっきまで人形だったはずの”わたし”は、机に向かって鼻歌を歌いながら宿題をしていた。
ーー
「杏莉ー、今日は人形返さなあかん日やろ? 忘れんと持っといでやー」
「わかってるー!」
杏莉は、ベッドに転がっていた人形のわたしを持って家を出た。
”わたし”は”杏珠”になり代わって学校へ向かった。
「杏莉ちゃんおはよう」
「先生おはようございます。お人形さん、かわいかった! ありがとうございました」
杏莉は無邪気に笑ってわたしを先生に渡す。
「丁寧に扱ってくれてありがとうね。……あれ? なんか前と変わってる……?」
先生はジッとわたしを見ていたけれど、気のせいか、と言って目を逸らした。
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