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魅力的な迷惑料
腰を抜かした俺はひとまず一階の夢さんの部屋へと運び込まれた。
管理人さんと吉岡もやってきて、現状を説明してくれた。
「ちょうど先生の真下に住んでるヤツが火を出しやがったんだ。ボヤで済んだから一部修繕にとどまったが、内装リフォームだけじゃ効かないらしくてな。上下左右の住人に1ヶ月間、住み替えを頼まにゃならんのだわ」
「ええっ!?」
「ひとまず知り合いに頼んで入居先いくつかおさえたんだが、近場はさっき埋まっちまってな。そこで相談なんだが、先生夏休みだろ? 悪いけど世田谷のマンションに仮住まい頼めねぇかな?
「えええっ?」
奇しくも学校は夏休み期間中に校舎の耐震補強集中工事をするため、不要な登校を避け、会議はリモートで行われることになっていた。
仕事は差し支えないが、問題は吉岡だ。
夏休み期間中は空き時間、吉岡が俺の部屋に来てくれることになっている。
吉岡と過ごせる時間は俺の生きるエネルギーだ。夏休み中、吉岡に会えないだなんて……そんなの死んじゃう。
返事を渋っていると、管理人さんは切り札を出してきた。
「迷惑料として期間中、うちのハルを貸し出すからよ」
「行きます」
俺は脊髄反射で即答していた。
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