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大人の事情
突如、吉岡と管理人さんの間で激しいバトルが始まった。
「ちょっ、お父ちゃん! そんなこと勝手に決めて!」
「いいじゃねぇか、どうせお前も夏休みだろ? ちょっと行ってナヨナヨ君にメシ食わせてやれよ」
「ちょっと行ってって、誰かに見られでもしたら……」
「世田谷に知り合いなんざぁいねぇだろ?」
「いいんですか、先生? 見つかったら懲戒免職もんですよ!?」
吉岡はこんな時まで俺の心配をしている。
「流石に同棲はまずいんじゃないのかい?」
すると夢さんから援護射撃が入った。
「三軒茶屋にあたしの実家があるから、ハルちゃんはうちで預かるよ。どうせあんた、住人への保証を安く切り詰めて浮いた保険金で遊び歩く算段だろ?」
「あっ! 婆さん、それを言っちゃあおしめぇよ!」
「もう! お父ちゃん、そんなこと考えてたの!?」
「世田谷のマンションはいいぞ。大型家電は備え付けだし、あそこのヒロは信用に足る人物だ」
「あんたが手放しで人を褒めるだなんて。さては相当、人情割引を効かせてもらってるね?」
「だから内部事情をバラすなって!」
夢さんにかかったら強面の管理人さんもタジタジだ。
とにかくそんな流れで俺は夏休みを世田谷のマンションで過ごすことになったんだ。
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