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「アルファ・ビルヂング」
東京都世田谷区の私鉄沿線に、そのマンションは建っていた。
外観は茶色の煉瓦造りに蔦が絡まるレトロな雰囲気。一階のパーキングに車を止めて、エレベーターで五階を目指す。
「507号室っと……」
俺は管理人さんから渡されたメモを確認しながらインターホンを押した。
やや間が空いて扉が開くと、中から思っていたよりもずっと若い男性が顔を出した。
「えっと、宇佐見真也さんですね?」
眼鏡の奥でラクダみたいな目がそっと笑っている。
それだけで俺は緊張がほぐれていくのを感じた。
「あ、はい。宇佐見です。よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げて顔をあげると、管理人さんの胸元で紫色の蝶々をかたどったネックレスがキラリと光るのが見えた。
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