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 自然に耳へ入って来る演奏を聴きながら彼と目を合わせ考えずとも滑らかに踊る。  あれ? 私って踊れたっけ? そんな疑問がふと頭に浮かんだがすぐにステップと共にどこかへ消え去った。  数多の練習をしてきたかのように息の合った踊りをしていた私たちを(少なくとも周りへ何度か目をやった感じはそうだった)もし上から見ることが出来たらそれはとても綺麗なのだろう。影のように支えながらも隠れはしない黒いスーツにタキシード、ヒラリと舞う鮮やかなドレス。一組一組の動きのみならず全体的に見てもそれは芸術的なはず。  それはそれからしばらく体の赴くまま踊っていた時だった。開くように互いの体が大きく離れるところで彼は私を引き戻さずそのまま手を離したのだ。私はまるで捨てられたかのようにそのまま勢いに身を任せ彼から離れていく。  だがそんな状況に驚きを隠せないでいる私を受け止めたのはあの白い男性だった。別の女性と踊っていたはずだが彼はダンスの一部であるかのように自然な流れで私を受け止めた。  そして私の顔を覗き込む眠たそうな目。 「次は僕と踊ろうか。Mrs.パンプキン」  それから私はその彼と続きを踊り始める。  先程と変わらず体に刷り込まれたようにステップを踏んだ。  だけどその最中――私はあることに気を取られていた。最初は気のせいかと思ったけどどうやらそうではないらしい。  彼の陰から時折何か白いモノが顔を覗かせているのだ。白く靄のかかったような何かがこちらの様子を伺うようにひょこりと。 「大丈夫だよ」  すると彼は私の心を読んだかのように吹けば軽く飛びそうな声でそう言った。 「この子たちは何もしないよ。」  最後に付け足された言葉は奇妙なものだったがどうやら私が思っている程、怖いものでもないらしい。自信は無いけど。  それに安心すると私はダンスを――彼との踊りを楽しんだ。  だけどまたもやアレが私を驚かせる。本来なら再び身を寄せ合うはずなのに彼は張った糸を切るように手を離し私を遠ざけた。
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