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 人間と異種族が共存するこの世界では、異種族による婚姻はよくあることとして受け入れられている。  南の果てに位置する深海には、人魚の一族が。  北の果てに位置する高山には、人狼の一族が。  そして東西に位置する大陸では、人間と獣人たちが領土をめぐってときに争いながら、国の興亡を繰り返している。 「ヒョウレンの王女さまは北の国へ嫁いでいかれるのよね。人狼の国の王さまとは運命的な出逢いをされたときいたけど」  ナターリアが暮らす深海からいちばん近くにあるのは、東の大陸を統一した標蓮(ひょうれん)という大国だ。  今宵はその国の王女さまの結婚式があるのだという。王女さまは人間で、お相手が北の果てを統治している人狼であることから、国民の反応は賛否両論あるらしい。とはいえ、お互いが納得したうえでの婚姻で、国をあげてのお祝い事ということもあり、表面上は明るい空気が漂っている。 「ナターリア。他人事のように言うが、このままだとお前さんは泡になってしまうぞい」
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