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「覚悟はしてる。あたしは深海の人魚とつがいたくないの。でも、いまの時代、人魚のお婿さんになってくださる異種族の方なんていらっしゃるかしら。人狼族みたいにつがいを探しだせる嗅覚も鈍いし」
人狼の一族のように「番」を見つけ出すことが可能ならば、はなしは簡単なのだ。
けれど人魚の一族はほかの獣人族に比べて「番」を探す能力が弱い。
年頃のナターリアは周囲の人間に「早くつがって処女を捧げないと、泡になっちゃうよ」とせっつかれていた。誰でもいいから一族の男と関係を持てと強要されかけたナターリアは、すきでもない男に抱かれるくらいなら泡になった方がマシよと言い放ち、深海から飛び出してきたのである。
「リーシア。泡になるって、どんな感じなのかしら」
「そうさねえ。まぁ、わしは泡になる前に番に見つけてもらった側だから、なんとも言えないねえ」
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