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「ヤヒコさま。あのとき、あたし……地下牢で抱かれてもいいと思っていたの。砂浜で押し倒されたときも、嫌じゃなかった……」
「ナターリア」
「でも、紳士なあなたはここまで連れてきてくれた。人魚の姿に戻っても気味悪がらずに、あたしのことを大切に抱いてくれた。もう、泡になることもないから……あたしもヤヒコさまの願いを叶えたいのです」
「俺の願い? ――ならば、もういちど人間になってもらえぬか」
「え」
「薬ならこちらで用意できる。陸で愛し合うならばヒト同士でつがうのが自然だ……俺はお前とのあいだに子が欲しい」
人魚は卵性のため、人間とのあいだに子を生すことはできないとされている。
だが、白東帝国の獣人王子はナターリアのはなしから、人間として孕ませることなら可能だと判断したらしい。
「――それって」
「お前が懇意にしていたというリーシアが陸にあがり、人間と番った際、子を生したという記録なら我が国にも残っている。人魚と人間の間でも人魚が人間に姿を転じれば愛の結晶を宿すことは可能なんだ」
「! そうなのですか」
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