13人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうね……自覚はないけどそうみたい。今回の件でもそうだったように」
「え、どいうこと?」
「男の人と会ってるって噂聞いてから、あなたのこと疑ってたの。最初は信じてたのよ? でも一度、疑いが芽生えるとどうにも自制が効かなくて半ば妄想気味になってた……とうとうこんな後ろめたいことまでしちゃって。
最初から妙な気をつかうこと無く、正面から話せば……良かったのよね。誰か男の人と会ってるのって」
「ふーん……そっか。でもありがとう、お母さん」
「ありがとう……って何を?」
「いつも私のこと、一番に考えてくれてってこと」
「りつ……」
思いがけない言葉に、じんと目の奥が熱くなった。同時に、自分が情けなかった。
これからは、もっと信じてもらえるような。信じてあげられる母親にならないと――
それから暫くしたある日、病院でタカユキと一緒に立ち会ったリツから報告があった。野良猫は無事に避妊手術を終えたと。
了
最初のコメントを投稿しよう!