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どき、どき、どき。
「渡瀬ありあさん!好きです、僕と付き合ってください!」
場所は学校。僕の掠れた声を聞いて、みんながこっちを見た。ああ、なんて恥ずかしい。僕は俯きながらも、どうにか手紙を差し出すのはやめない。
今日こそ僕の想いが、届きますように。そう祈りながら、ドキドキしすぎて震える手で彼女に手紙を渡す。目の前にいる、クラスメートである彼女に。
「……ふうん」
もう、何十回目の告白になるだろう。そのたびに、ありあは興味なさそうに僕の手紙を受け取って中身を見るのである。
封筒を開いて読んでくれるだけ、まだマシになったのだ。一番最初の頃は、宛名の字が汚いというだけで中身も見ずに捨てられてしまったのである。一生懸命書いたラブレターだったというのに。
「……はあ」
そして、今回も。中身を読んではくれたが、駄目なのは彼女の反応ですぐにわかった。ありあは手紙を僕の目の前で破ると、“やり直し!”ときっぱりと宣言したのだった。
「もっと、想いをこめて書いてよ。本当にあたしが好きなの?」
まだ駄目なのか。僕は悔しさで涙が滲んだ。
やっぱり、恋愛映画も恋愛漫画も読んだことがない、他の恋も経験したことのない自分に、気持ちを届ける文章なんか書けないのかと。
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