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「え?えっと……凄く可愛かったこと、かな。友達と笑ってる顔が可愛かったし、みんなの前で発表する声もすごく綺麗だったし、かけっこで走る姿も綺麗で……」
「あーうんわかった、ようは一目惚れだったわけね」
「……うん」
確かに、こういうのを一目惚れというのかもしれない。実際、僕が彼女を好きになったのは春のクラス替え直後のこと。今まで同じクラスになったことがなかったので、彼女の存在そのものを認識していなかった。
だからまあ、性格は完全に考慮していなかったわけである。まさかここまでのことを要求されるようになるなんて、思ってもみなかったわけで。というか、告白するまで知らなかったわけで。
「俺も、女の子に告白したことなんかないからわかってるとは言い難いけど」
言葉を探すように視線を彷徨わせながら翔也は言った。
「やっぱり、褒められて嫌な気分になる女の子はいないと思うんだよな。でもこの手紙の中では、お前がありあちゃん?とかいう子のことが好きだっていうのしか伝わってこないというか……その子のどこが好きなのかが全然書いてないな、って思って。だから、それをちょっと詳しく書くといいんじゃないか?こんなに自分のことを見てくれてるんだ、と思ったらその子も凄く嬉しいと思うんだけど」
「なるほど!」
流石兄である。女の子と付き合ったことがあるはずなのに告白したことないのか――というあたりには、モテ男うらやましいぞこの野郎!と思わなくもなかったが。まあそれはさておき。
「わかった、ちょっとそこを重視してお手紙書いてみる!」
「おう。あ、あと誤字脱字には気をつけろよ。大事な手紙は下書きしてから書け。わりとそういう手紙の誤字脱字ってマジで萎えて文章頭に入ってこなくなるから」
「うん!」
僕は頷くと、手紙を回収して自分の部屋に戻っていった。今日まではゴミを積み重ねるばかりだったが、きっと明日こそは変えてみせる。
僕がどれほど真剣なのか、ありあを想っているのかを伝えて合格を貰うのだ。そして、全てが始まるのだから。
「よし!」
僕は破れた手紙を捨てると、机から新しい便箋を取り出したのだった。
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