下駄箱のラブソング

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 ***  小学生男子はこれだから、なんて言ったが。勿論クラスにはいろんな子がいるし、中には中学生かと思うくらい大人びた少年もいるのは事実だ。  例えば、クラスで一番イケメンの北島(きたじま)君。背は小さいけれど落ち着いているし、クラス委員をしていてすごく賢い。いろんな子の相談に乗ったりもしている、頼りになる少年だ。ひそかに私にとっても憧れの人物であった。顔だけならばチー君もそれなりだけれど、性格は大違いである。彼氏にするなら、絶対北島君の方がいいに決まっている。 ――チー君も、あれくらい大人だったらいいのに。  ある日の放課後。今日も少年少女達に囲まれている北島君をちらっと見て、私は教室を後にした。今日は塾もないし、友達と特に遊ぶ約束もない。たまには近所の図書館にでも寄ってから帰ろうかな、なんてことを考えていた。学校にも図書室はあるが、いかんせん置いてある本の種類が少ないのである。私は児童書よりも、もう少し大人の人が好きそうなラノベなどの方がずっと好みなのだった。  やっぱり異世界を冒険する話はいい。最近は、女の子が主人公の話も多くて楽しいから特に。 「え」  そんな私は、下駄箱で目を見開くことになるのである。私が女子で一番高身長ということもあって(というか、男子を含めても二番目くらいに大きい)、下駄箱は一番上になっている。手を伸ばして靴を取ろうとした時、かさり、と手に触れる感触があったのだ。 ――こ、こ、これってまさか……!  明らかに、四角い紙。しかも封筒。ラブレターでは、と期待するのは必然だろう。 ――ま、まさかまさかまさかまさか!い、今の時代にもこういうのあるの!?ら、ラブレターでの告白……!  胸を高鳴らせつつ、靴と一緒にそれを下ろした。やはり、そこに入っていたのはコンビニでも売ってそうな白い便箋。男の子が好きそうな、車のシールで封がしてある。そして表には、“塩田(しおた)かずさ様”の文字が。  さらに、中身は。 『塩田かずさ様。  こんにちは、塩田さん。じつは、ずっと前から、塩田さんのことが好きでした。  クラスでいつも塩田さんのことを見ていたのに、ぜんぜんきんちょうしてしまって、はなしかけることができませんでした  でも、もうおさえきれません。  ぼくの思いを聞いてほしいです。  今日のほうかご、屋上でまってます。  北島泰星(きたじまたいせい)』 ――き、き、北島君からラブレター!?
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