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「戸塚大輔だな」
厳つい感じの年配男性が尋ねる。
「は、はい、そうですが」
「聞きたいことがあるので、署まで同行願いませんか?」
柔和な雰囲気の三十代と思しき男が、刑事ドラマのそのままの台詞を言った。
「え? あ、あの、僕が、何か?」
あれよ、あれよという間に彼は二人の男に挟まれ、図書館から連れ出されてしまった。
「な、何、今の?」
口をパクパクさせて、久瑠未が近づいて来る。
「黒い手帳を見せていたし、署までって言っていたし……」
「も、もしかして、刑事?」
目の前で起きた展開が理解できず、その場にいた学生たちは皆フリーズしたまますると、私たちの背後から誰かかが声をかけてきた。
「……あなたたち、あの人と知り合いなの?」
声をかけてきたのは付属中高校の卒業生で、今は大学の総務部に勤める杉野由依だった。
「せ、先輩、お久しぶりです」
由依は私と久瑠未が所属していたバスケ部の先輩だった。年齢こそ五歳離れているが、中高一貫校なので一時期は密な交流があった。だか、今は同じ構内にいても、顔を合わせないような間柄だった。
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