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「ちょっと、訳ありでしてね」
久瑠未がおどけて答える。
「訳あり? 何なの、それ?」
「く、久瑠未!」
慌てて久瑠未に口止めする。金曜日の彼への恋は誰にも言えない秘密で、久瑠未以外には打ち明けていない。それをかつての憧れの先輩だったとしても、友人でもない由依においそれと話すなんてあり得ない話だ。
「いえ、別に何でもないです。でも、怖いですよね、知っている人が殺されるなんて。しかも、殺害現場が大学構内なんて、信じられないです」
私は咄嗟に話をはぐらかした。金曜日の彼に目を向けて欲しくなかったからだ。
「え、ええ、そうね。まさか、あの刈谷君が殺されるなんて驚きよね」
「杉野先輩は刈谷先輩と面識はあったんですか?」
「い、いいえ、特に。あの人のいたグループは特別だったでしょう?」
「ですよね、でも。先輩も目立った存在だったから、少しは面識があったんじゃないのかなって思っちゃいました」
バスケ部でレギュラーとして活躍していた由依は、モデル体型の美人でかなり目立つ存在だった。
「私はバスケオンリーだったから、彼らのような派手な人たちとは無縁だったわ」
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