Just only you

　だが、刈谷が殺されたのは金曜日で、口論していたという時間は昼休み。しかも、目撃された場所は図書館から離れた講堂の裏庭だった。
「……それって、もしかして先週のあの日？」
「そう。伊織と私が図書館にいた、例の盗撮した時間らしいのよ」
　もちろん、匿名の目撃情報だけでは信憑性は薄いだろう。しかし、事件現場に大輔の所持品だと思われる腕時計が落ちていたので、警察は任意同行を求めたそうだ。
　だが、ここで当然問題が浮上する。目撃情報のあった時間に、大輔は図書館にいた。そして、先週金曜日の彼の行動を考えると、何かを探している様子だった。もしかしたら、それは事件現場に落ちていたという腕時計ではないだろうか？
「私たちがアリバイ証明しないと、彼が犯人になっちゃうの？」
　好きになった人に殺害容疑がかかると知り、私は既にパニック状態だった。
「ねえ、伊織。私が撮ったやつ、削除してないよね？」
　冷静に久瑠未が問いかける。
「盗撮した写真？　もちろん、消す訳ないじゃない」