Just only you

「それにしても、清掃員が図書館で勉強ねぇ」
「制服姿ではないので、私はずっと同じ学生だと思い込んでいました。だから、清掃員と聞いて驚いたんです」
「図書館に居る時はいつも作業着ではなく、私服姿だったんですか？」
　清掃員はお揃いの作業着に帽子を被っている。何処かですれ違っても帽子を深く被っていれば、いくら私でも彼だと気づかないだろう。
「はい、もちろん。この写真だって、そうですよね」
「それでは、図書館にいた周囲の人々も、彼が清掃員とは気づいてなかったと思いますか？」　
　実はタレコミ電話以外にも目撃情報があり、男子学生と作業着姿の清掃員が一緒だったとの目撃情もあったそうだ。
「多分、図書館にいた全員が、彼が清掃員とは知らなかったと思います。久瑠未はどう？」
「私も知りませんでしたから、今聞いて驚きました。学生でもない人が、どうして先輩とつるんでいたのかなぁって。それよりも、どうやって先輩と顔見知りになったのか、それにも違和感があります」
「清掃員が図書館にいたから、刈谷が注意したとか？」
　木元が尋ねるも、それはあり得ない話だった。