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警察署から出てくると、誰かに呼び止められた。
「すみません、成都大学の学生さんですか?」
「え、はい?」
振りむくと、そこに金曜日の彼の姿があった。
「あれ? 君は……そうだ。さっき図書館で声をかけてきた人だよね?」
「は、はい!」
彼の反応からするとストーカーのように図書館に通っていたことはバレていないようだ。ほっとしながら私を覚えてくれたと知り、ただ単純に嬉しくなった。
「ありがとう、君たちのお陰で解放されたって刑事さんから聞いたから」
立ち話でお礼は申し訳ないと、近くのファストフード店に入る。そして、コーヒーを飲みながら彼から連行された経緯を聞いた。
「改めて、俺は戸塚大輔。派遣で清掃の仕事をしています」
「私は廣岡久瑠未、国際学部一年。そして、ほら。自分で言いなさいよ」
久瑠未にせっつかれ、私も自己紹介する。
「わ、私は藤澤伊織です。久瑠未と同じ国際学部一年生です」
大輔が高校三年の秋に父親が大病を患い、大学進学を諦めたそうだ。高校卒業後は就職したのだが、半年前に勤め先が倒産したため派遣社員になった。働きながら進学資金を貯めている最中だという。
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