14人が本棚に入れています
本棚に追加
身長は推定一七二、三センチ。やや細身で黒髪のマッシュショートヘア。顔立ちは整っているものの、特徴がない和風顔のため地味な印象だ。
服装も特に印象に残らない白いフーディーに黒デニムパンツというシンプルコーデ。銀縁のオーバル(楕円形)の眼鏡をかけている。
だけど、目を伏せ活字を追う時に目立つ長いまつげや、本のページをめくる細い指先が彼の魅力を引き立たせている。決して目立つ存在ではないが、私には強烈に響いていた。
「やっぱり、ここからの角度が一番素敵ね」
多分、今日も声をかけることはないだろう。いや、声をかけるなんてできないだろう。今の私には彼を見つめるだけで満足だった。
「……現場確保、とうとう見つけたぞ。金曜日のこの時間いつの間にか消えるのは、こういう理由があったのね」
突然、背後から聞き覚えのある声がした。
「うわぁ、く、久瑠未」
声の主は中学生からの親友、廣岡久瑠未だ。毎週誰にも気づかれないよう、うまく輪の中から逃げ出していたはずだった。それなのに、とうとう金曜日の至福の時間を悪友に見つかってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!