Just only you

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 成都大学の図書館は一般開放していて、受付で氏名等の記入をすれば誰でも利用できる。それなのに、学生のふりをするのはおかしいというのだ。 「俺にとって大学は職場だから、休憩時間といえ勝手に出入りするのは少々都合が悪いんだ。それに……」  実はまたもや学生のふりをして、こっそり講義にも参加していたらしい。 「もぐりってこと?」 「あぁ、そうだよ」 「そうか! だから、この顔に見覚えがあったんだ」  同年代の大輔ならば図書館に居ても授業に出ていても、誰もが学生だと思うだろう。実際に私も久瑠未も、大輔が成都大学の学生だと思い込んでいた。しかも、清掃員の作業服姿ではなく、今のような私服姿なら尚更そうだろう。それなのに、タレコミ電話はずばり清掃員だと指摘していたそうだ。 「派遣清掃員の戸塚と名指しされたと聞いて、どうして俺の名前が出たのか意味がわからないんだ」  誰にも話かけず、話かけられないよう目を合わせない。そんな大輔が学生ではなく、清掃員だと知っている人物は限られているだろう。
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