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私たちに気づいた二人が声をかけてきた。
「あそこの席から写真を撮ったんですよね」
私がいつも陣取っているY三一五のテーブル席を指さした。
「はい、そうです。私からあの席は見えますが、彼の方からは本棚が邪魔になって死角になります」
私の説明通りに刑事たちはスマートフォンで撮影を始める。
「OKです。確かに同じ角度の写真が撮れました」
二人は写真がどのように撮影されたか確認したようだった。
「スマートフォンに残された写真情報は操作できませんから、提供していただいた写真は重要なアリバイ証言となります」
「それに腕時計の件も、彼が落としたという話を幾つか聞いていますよね?」
さっき収集した情報をもとに、私が問いかけた。
「確かにそれも聞き込みしていたら、証言が出てきました」
「それならば、彼は無罪放免ですよね?」
希望的観測で勢いよく尋ねてみたが、刑事たちはお茶を濁した。
「それは……まだ事件は捜査中ですから、何もお答えできません」
捜査はタレコミ情報や目撃情報以外に、怨恨の線も視野に入れているらしい。ただ、インカレサークルの代表を務める刈谷はSNSでの繋がりも広く、交友関係を洗うにも時間がかかりそうだと木元刑事はこぼしていた。
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