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「だからといって、恋愛には進展していないでしょう? それで満足していちゃ駄目じゃない」
そう久瑠未は意地の悪いことを言うが、私は一向に構わなかった。
「私だって恋愛に発展すれば嬉しいけれど、今はまだそんな時期じゃないと思うの」
もしも、あの事件がなかったら、ただ見つめるだけで私の恋は自然消滅していただろう。それを考えたら、ラインできるだけでも幸せだった。
この先二人の関係がどうなるか、皆目見当がつかない。でも、今は恋の行方より大事な事がある。
年明けには大輔の大学受験も始まる。手を上げたからには犯人の手がかりくらい見つけたいと意気込んでいた。
それから年が明け一月。刈谷亜斗夢殺害事件に動きがあった。
殺害当日、刈谷と口論していた清掃員が警察に出頭し、裏庭でのやり取りを白状したそうだ。
「……十月の半ば頃だったかなぁ。急に事務員から講堂の裏庭にある雑草を伐採して欲しいと頼まれたんです。だから、俺ともう一人の清掃員で一時間ぐらい借り出されたんですよ」
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