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一方その頃、成都大学でも事件解決に繋がる動きがあった。校内巡回中の警備員の一人が、先月初め男子トイレで例の腕時計を拾ったと私に教えてくれたのだ。
「あの事件の三日前に交通事故に巻き込まれ、入院していたんだよ。無事に退院し職場復帰したら、私が拾った時計が事件の鍵になっているって聞いてね。驚いたのさ」
自分が居ない間に大事件が起き、拾った腕時計が注目されていた。それを知って警備員は驚いたそうだ。
「それで、その拾った腕時計はどうされたのですが?」
「もちろん、大学の規則だから総務に持っていったよ」
成都大学では遺失物の届け出は総務部がおこない、学生センターで三か月間保管している。
でも、私が総務部に尋ねた時、大輔の腕時計は届いていなかった。もちろん、そのことは大輔も知っている。
「でも、総務部では受け取ってないみたいですよ」
「おかしいなぁ。確かに届けたんだけどな」
「総務部の誰が受け取ったんですか?」
「ほら、あの背の高い美人の事務員さん。名前は……」
「杉野、杉野さんでは?」
「そう、そう。杉野さんだ」
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