14人が本棚に入れています
本棚に追加
確かに総務部では腕時計の落とし物はなかったと証言した。遺失物台帳にも記載がなかったという。ところが、警備員は由依に腕時計を渡したと証言している。
「この話はもう警察に伝えたのですか?」
「学生食堂であんたらの話を聞いて、今日初めて喋ったんだよ」
そうだ、事件後は入院中で蚊帳の外だったとこぼしていた。
「それなら、この香川か木元という刑事さんに、この話をしていただけませんか?」
刑事たちから貰った名刺を警備員に渡す。
「やっぱり、重要なことだったのかい?」
「ええ、多分。よろしくお願いします」
「は、はい。直ぐに連絡しときますね」
血相を変えて警備員はスマートフォンをポケットから取り出していた。
「……でも、どうして由依先輩が腕時計を?」
重要な証言が見つかり、喜んで良いはずだった。それなのに、今は嫌な予感しかしない。
それでも事件解決に近づいたのだ、大輔のためにも途中で放り出すわけにはいかない。
最初のコメントを投稿しよう!