Just only you

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 確かに総務部では腕時計の落とし物はなかったと証言した。遺失物台帳にも記載がなかったという。ところが、警備員は由依に腕時計を渡したと証言している。 「この話はもう警察に伝えたのですか?」 「学生食堂であんたらの話を聞いて、今日初めて喋ったんだよ」  そうだ、事件後は入院中で蚊帳の外だったとこぼしていた。 「それなら、この香川か木元という刑事さんに、この話をしていただけませんか?」  刑事たちから貰った名刺を警備員に渡す。 「やっぱり、重要なことだったのかい?」 「ええ、多分。よろしくお願いします」 「は、はい。直ぐに連絡しときますね」  血相を変えて警備員はスマートフォンをポケットから取り出していた。 「……でも、どうして由依先輩が腕時計を?」  重要な証言が見つかり、喜んで良いはずだった。それなのに、今は嫌な予感しかしない。  それでも事件解決に近づいたのだ、大輔のためにも途中で放り出すわけにはいかない。
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