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妄想の世界でデートを楽しむ二人の姿があった。でも、こんな素敵な場所は刈谷亜斗夢が殺害された現場なのだ。つい先日まで警察の物々しい立ち入り禁止のテープが張られていた。
「あら、変ね。あの場所だけ何にもない。これから植樹とかするのかな?」
何故か一画だけぽっかりと草木のない綺麗な更地がある。気にも留めていなかったから、ここに何が植えられていたかまるで覚えがない。
「藤澤さん、ここで何をしているの?」
突如として、またしても由依が私の前に現れた。偶然にしてはでき過ぎた感があり、背中がぞっと冷たくなる。
「せ、先輩。先輩こそ、どうしてここに?」
勤務中の由依がどうして講堂の裏庭にいるのだろうか?
「犯人は現場に戻る? や、やっぱり先輩が?」
「何をぶつぶつ言っているの?」
大学に入学してから全く顔を合わせなかった由依と、刈谷亜斗夢殺害事件が起きてから何度も会っている。それも犯人捜しをしている最中に。
これはもう偶然ではない。きっと由依が事件解決の動向を見張っている証拠なのだろう。
「先輩は本当に刈谷先輩とは面識がなかったんですか?」
ずばり核心に迫ってみる。
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