Just only you

　こんな穏やかな私たちの大学生活の裏で、衝撃的な事件が起きていた。同じ金曜日に経済学部三年の男子学生が、大学構内で殺害されたのだ。週末はこの殺人事件が各メディアで取り上げられ、世間を騒がせていた。
「……まさか、あの刈谷先輩が殺されるなんて」
「先週の金曜日の午後、殺害現場は講堂の裏庭だって話よ」
「大学の構内っていうことは、犯人はここの学生ってこと？」
「やっぱり、それってテレビドラマみたいに顔見知りの犯行ってやつかな？」
「白昼堂々と殺人事件なんて怖いよなぁ」　
　週明けの月曜日、成都大学では様々な噂が飛び交っていた。被害者は刈谷亜斗夢(かりやあとむ)。インカレサークル「＃LEGACY」の代表で、私たちと同じ付属中高校から大学と進んだ学生だった。
　資産家の家庭に生まれたらしく、やたらと羽振りの良い男だった。しかも、見た目も良く、要領も良いので素行が少々悪くても、教師たちからの評価が落ちることはなかったようだ。
　いわゆるスクールカーストで上層部にいるような存在で、地味でモブキャラの私には縁遠い人物だった。
「犯人とか詳しいことは、まだ何もわからないんだよね？」
　私と違って社交的で情報通の久瑠未に尋ねてみる。