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「まだわからないみたいね。ニュースでは正面からナイフでぐさりと刺されたそうよ。しかも、犯行に使われたナイフはまだ見つかっていないって話よ」
平然とした態度で久瑠未が答える。
「うぇ、怖過ぎ」
「あの人は一軍にいたから面識ないけど、兄貴から近づくなって注意されていたから」
二歳年上の兄が刈谷と同級生だったため、久瑠未はある程度の情報を知っているようだ。
「でも、派手に遊んでいたのに上にも進めたから、成績も悪くなかったのかなって思っていたけど……違うの?」
いくら付属校からの進学とはいえ、一定のラインの成績でなければ大学へは進めないはずだ。
「うぅん、それはどうかなぁ。要領が良いだけかもしれない。内申ギリギリ、それ以下のところを、親の力で無理やりねじ込んだって噂もあったらしいよ」
刈谷とは違い成績優秀だった久瑠未の兄は、某国立大学に外部進学していた。
「でも、それだけで殺される理由はないよね?」
「当たり前じゃない。余程のことでもない限り正面からナイフで刺されるはずないもの」
「それって、よく聞く怨恨ってやつ?」
「多分、そうでしょうね」
何者かに殺されるくらい刈谷亜斗夢は、大きな恨みを買っていたようだ。それがまさか、私と金曜日の彼とを結びつけるとは思いも寄らない展開だった。
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