14人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
二日後の昼休み。私は久瑠未と一緒に冬休みに仕上げる課題用の資料集めに図書館に行った。すると、珍しく金曜日の彼がそこにいたのだ。
何度も彼の姿を探して図書館に通ったが、今まで金曜日以外に見かけることはなかった。
それが今日に限って出会えるなんて、一粒万倍日かもしれない。
「うわっ、ラッキー」
彼をじっと眺めていると、何か探し物をしているようだ。いつも座っている場所辺りにかがんで、机の下や床を覗き込んでいる。
「声をかけるチャンス到来だぞ。さぁ、行け伊織」
興奮した久瑠未がはやし立ててくる。
「で、でも、何て言えば良いの?」
「何かお探しですか? それだけで良いのよ。頑張って!」
背中を押され、意を決し彼に近づく。私の台詞はひとつ、頭の中で繰り返し確認する。
「あ、あの、何かお探しですか?」
金曜日の彼が顔を上げ、二人の視線がぶつかる。彼は驚いた様子で目を見開いている。
すると突然、周囲が急にざわめきだした。何処から見ても大学生とは思えない、目つきの鋭い背広姿の中年男性二人が私たちの前に来たのだ。
そして、彼に向かって声をかけた。もちろん、それは「何かお探しですか?」ではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!