海の中の入道雲

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「行ってくる…」 僕は、ある中学校に通っている普通の中学生だ。 明日から念願の夏休み。僕は、部活にも入っていなかったので、課題を終わらせ、山に出かける、というルーティーンを毎年繰り返している。山で寝そべって真っ昼間から寝ているのだ。たまに、森の探検などもする。毎年と言ってもこのルーティーンは、まだ二回しか経験していないが。 僕の家の裏にすぐ、うちが所有している山があるので、最近、暇さえあればいつもそこへ出かけている。家は二階建てで二階へ上がると、山の緑が見える。鮮やかに煌めき、風で靡く。森の命と澄み渡った空気、少し冷たくて、不思議なモノを感じさせながら。 僕の部屋は一階にあり、二階は主に荷物置き場になっている。ので、二階はあまり立ち寄りたくない。それに僕の部屋から山が見えないのが、ちょっと気に入らない。 ここで一つ、山の話をしよう。山の所有権は正確に言うと、おじいちゃんのお父さんの土地なのだが、二年前おじいちゃんが倒れて最近死んだので、よく分からない。おじいちゃんは、口癖のように、 「絶対に、山に一人で入ってはいかんぞ」 と限りなく低い声で言っていた。おじいちゃんの風貌から、口からでる言葉には重みがあった。 小さい頃、山に気軽に入れると言うよりは、おじいちゃんの畑仕事のついでに、付いて行くことしかなかったので、何かが弾けるように最近、山に籠もっている。毎回行くごとに、何かが毎回違っていて学校生活なんかよりも、変化に気付く事ができ、成長したようで嬉しい。山を吹き抜ける風は、何時も違うがやはり、ほんのり甘く、清々しい風だ。
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