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「いたぞ! こっちだ!」 「しまった!」  男の声に振り返ると、そこには銃を持った数名の男がいた。しかも男達の後ろには豹のような動物がいて、明らかに男達を守るように牙を剥いている。 「肉食獣人もいるのか……」 「当然。さあ来い。買い手が待ってるからな」 「そう言われて大人しく捕まってやるわけないだろ」 「はっ! 鳥獣人の羽は腕。抱いて飛ぶこたできねえだろ!」 「それに有翼人の羽は神経がないから飛べねえ。逃げらんねえよ」  立珂の大きなな羽はずるずると引きずるだけで鳥の様に羽ばたくことはできないのだ。男たちがにじり寄ってくる分だけ崖の縁まで下がっていくが、男達は勝ち誇ったようににやにやと笑っている。  薄珂はちらりと立珂を見ると、左右から羽をひっぱり身体に巻き付けていた。羽は体を覆うほど大きいため、立珂はすっかり白い塊と化している。 「薄珂。できた」 「よし。父さんの小刀持っててくれ。落とさないでくれよ」 「んっ!」  薄珂は立珂に小刀を持たせたが、そうしている間にも先頭の男がぬうっと薄珂に手を伸ばした。指が目の前に迫り捕まるのはもう数秒後だろう。  しかし薄珂は素早くしゃがんで立珂を羽ごと両手で掴んだ。これでは飛べない。落ちるだけだ。それでも薄珂は立珂を抱えて飛び降りた。 「なんだと!?」 「てめぇ!」  薄珂は落下しながら立珂を手離すと、瞬間で服を脱ぎ捨て獣化した。そしてすかさず立珂を空中で掴んでばさりと飛び上がる。 「飛びやがったぞ!」 「撃て! 撃て!」  崖の上からはがんがんと銃が火を噴く音がした。薄珂は羽ばたき続けたが、銃に撃たれたたのか身体に激痛が走った。 (立珂だけでも安全な場所に下ろす!)  薄珂は銃弾を受けながらも飛び続けた。少しすれば銃声は聴こえなくなったが、足元に広がるのは海ばかりだった。傷付いた羽で長距離を飛び続けることはできず、ほどなくして二人は海に叩きつけられた。
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