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〇
少女に招き入れられ入った家は、白雪姫を連想させるような内装だった。全体的に明るく、アイボリーホワイトの椅子や机、淡いピンクのカーテンやテーブルクロス、家中にあるオレンジ色や黄色の花瓶には庭で採れたものだろうか、小さくも色とりどりの花がいけられ、さらに窓や机、小さな棚の上など至る所にぬいぐるみが置かれていた。
「か、かわいい…。」
「でしょう!」
思わず零れた言葉に少女は満足そうに笑った。そして机のほうへ私の袖を引く。
「さぁさぁすわって!おもてなししなくちゃ!」
少女に合わせたのかおままごと用のような小さな椅子に腰掛ける。
「まっててね。おのみものもってくるから。」
そう言った少女は奥の扉の中に消えていった。
「おかまいなくー…。」
聞こえずに消えた声が部屋に響く。机のすぐ近くにある大きな窓からは人工的な灯りなどいらぬとでもいうほどに部屋全体を明るく照らし、時折鳥の鳴き声が聞こえてきた。部屋を見渡せばかつての子供部屋を彷彿とさせる。まるであの子のために全てが作られたような、そんな部屋だった。ただ、1つ疑問に、いや怪訝に思うのは、
(…広すぎないか?)
あんなに幼い子の秘密基地というにも、子供部屋というにも十分すぎる広さだ。大人が1人か2人で暮らせる大きさじゃないのか?と思うほどに。
「さぁさぁ!おちゃがはいりましたよー。」
少女はおぼつかない足取りでお盆に、これまた小さなカップをのせてきた。微笑ましいと思いながら「ありがとう」と言った。両手にすっぽりと収まるカップにはなみなみとジュースが注がれていた。
(お茶じゃないなぁ。どこでそんな言葉覚えたんだろ…。)
一つ一つがかわいい動作の少女は自分の前にカップを置き、ちょこんと私の前の席に座った。
「さぁさぁ!めしあがれ!」
そして、小さな『お茶会』が始まる。
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