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「―――」
なんてことはない。いつもの風景だ。社会科の教師は今日も教壇の上で自論を振りまく。クラスメイトの反応から同意してるやつらはほとんどいないだろう。その教師は気づいていないのか、気づいていて無視しているのか。どちらにしろ早く授業を進めて貰わなくては今日終わるはずの単元が終わらなくなる。
(この話、まだ続くのかな…。)
テストに出る訳でもない話を聞く気は更々ない。少し意識を逸らしては昨日のことを考える。昨日、学校を出てから家に着くまでの、いや、就寝するまでの記憶がない。疲れているのかとも思ったがそれにしてもなにも覚えていないというのには違和感を覚える。朝、母に聞いてみたのだが「普通だったわよ?」と言われてしまった。少なくとも拐かされ知らぬうちに眠り送り届けられた訳ではないようだ。
(我ながら発想が不穏だなぁ…。推理小説ばっかり読むから…。)
日々友人に言われてきたことをやっと自覚する。視線の先には日光に反射するグラウンドがあった。その明るさには既視感があったが、長ったらしい話がやっと終わったのか再開した授業に思考を遮られる。
(なんだか変な感じ。)
全く集中できないまま授業が進んでいく。こんなくだらない悩みをあの子なら笑い飛ばしてくれるだろうか。
(はやく放課後にならないかな。)
ぼーっとしている間に時間は過ぎ、放課後が近くなる。いつもの友人を思い浮かべば、重かった気持ちが少し晴れた気がした。
授業が終わる。ホームルームも終盤になり、待ち遠しい時間が来る。今日はどんな話をしようか。頭の中はスッキリしないまま早足でやけに長い廊下を進んだ。
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