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〇
「ちょっと!聞いてるの!?」
「わっ!」
「わっ!じゃないわよ!聞いてないじゃない!」
「ご、ごめん。」
左右に低く結んだ黒髪が目の前で揺れる。彼女は怒りを隠すつもりもなく身を乗り出し、顔を近づけていた。長い前髪の間から真っ直ぐな瞳がこちらを睨みつけていた。
「せっかく人が真面目に話してたのに!」
「ごめんごめん…。」
えへへと笑えば頬を抓られる。
「い、いひゃい…。」
「もう…。次はないから。本気で怒るから!」
「ご、ごへんなひゃい…。」
口を尖らし念を押すように言う彼女にもう一度謝れば、
「ふふ…。あほ面。」
そう笑いながら手を離した。夕焼けに照らされた2人きりの教室で2人して笑い合う。彼女は私の数少ない友人だった。
放課後になればいつも2人で空き教室を探し勉強をしている。やってる内容は今日の授業だったり、予習だったり、テスト勉強だったりと日によって変わるが「こうでもしないと勉強しない」という共通意識の下、部活動に属さないことをいいことに決めた約束のようなものだった。
前後の机と机をくっつけてノートと教科書を広げる。2人で買ったお揃いのシャーペンを握る。今日は分からなかった授業の復習だ。そして、2人だけの『勉強会』が始まる。
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