記憶

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「……え、月那(るな)ちゃん…?」  私の大親友、知花(ちか)が消え入りそうな声でつぶやく。  うん、そうだよね、完全に引いたよね。と、私はそちらに恐る恐る顔を向ける。  しかし、知花の顔は… 「わあっ、月那ちゃんなんだね!」  とても嬉しそうに輝いていた。  私は、思考が完全に停止した。今夜はもう、眠れなさそうだ。  私が固まっているのも気にせずに、知花は続ける。 「私ね、前世では聖女していたんだよ!きらきら~って魔法使って。ちなみに名前はフルール・ネオナーだよっ」  いえい、と満面の笑みでピースをする知花。確かに、その天真爛漫な性格は聖女っぽい。  知花の隣にいた(もも)もおずおずと発言をする。 「私も…前世の記憶があるよ…。私は魔術師だった。名前は…ピーチ・ライナース」  私はその名前に目を見張る。だって、その名前は前世の世界に魔術の革命を起こした人物の名前だった。確かに桃はすごく頭が良い。 「俺は勇者」 「アタイは暗殺者」 「僕は騎士」 「ウチは王女」  次々と私の友人の前世が判明していく。しかも、話をしていくにつれ、彼らは皆、私と同じ世界からの人で、結構有名な人物だった。  最後に私の思い人、聡太君に期待の目が集まる。ここまで来たら、彼にも前世の記憶があるんじゃ…?と。  私達が見ると、彼はカチリと固まって私の方を凝視していた。  あれ、もしかして、彼には前世の記憶がない…?全員が落胆しかけたとき、彼が呆然と声を出した。
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