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自己紹介もほどほどにしなければ。喋ってばかりだと下もやる気が削がれてしまう。
「よし、作業に入るか。しばらくの間サラ隊員の指導にはカムラが就いてくれ」
「え、何でですか?」
不服を申し立てたのは指導係に任命したばかりのカムラだった。
「何でって、いつも新入りの指導はカムラに任せてるじゃないか」
「そりゃバイトは俺が教えますけど、サラ隊員は正規雇用ですよ?ならヤマト班長が指導すべきですよ」
念のため言っておくと、カムラも雇用形態は非正規。
バイト上がりながらその優秀さ故に副班長まで上り詰めた出来るやつ。だからこそ正規雇用のサラを招き入れるスペースがあった。
「いずれ副班長になるんだし、ちゃんと育てた方がいいですよ。俺もいつまでいるか分からないですから」
「はぁ!?お前辞める気なの!?」
今世紀一番の衝撃に膝が震えた。
行かないでオーラを全面に出すと、カムラは気まずそうに目を逸らす。
「まぁ、そのためにバイトでいるんで。今すぐじゃないけど、いずれはと」
「理由は?金か?作業内容か?俺が悪いなら言われた通り全部直すから!後生だから辞めないでくれ!」
まるで女に捨てられる寸前の駄目男みたいになっていた。サラがいなかったら余裕で土下座している。
「理由と言われても俺の人生だからとしか……。まぁ少なくとも1年はいるんでそれまでにサラ隊員を立派に育て上げて下さい」
正直な話、カムラが副班長として期待以上の働きをしてくれたからどうにか切り盛り出来ていた。
でも裏を返せば、バイト以上の仕事を彼に任せていたことになる。これはいつも危惧してことだ。
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