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第二稿・千歳神威先生のアドバイザー始めました
「七飯 由仁っている?」
平和な、お昼休み。
お弁当を広げているところに名前が聞こえて振り返ったら、奴がいた。
「あれって、三組の枝幸じゃね?」
「えー、何々、知り合いだったの?」
「もしかして、そういうアレ的な?」
こういう場面で邪推してしまうのは仕方ない。
由仁だって、あることないこと妄想するのは嫌いじゃない方だ。
但し、自分がされる側じゃなければ、の条件がつくけれど。
「ふーう」
まずは落ち着け。
ここで慌てると、ますます誤解が広がるだけだから、愛想笑いを張り付けて大人な対応をしてやろう。
「何かご用ですか」
「昨日、約束しただろう。だから、早速、付き合ってもらおうと思って」
このやろう。
由仁の気遣いは、まったくもって通じてなかった。
「ここじゃあ、なんなので、移動しませんか」
「そだな。行こ、行こ」
誘いに来た枝幸を背後に、足早で先を歩く由仁は、めっちゃ不機嫌さ全開だった。
なのに、空気を読まない枝幸は、のんきに「いやぁ、マジでびっくり。知ってた? 俺ら、隣のクラスだったって」などと、のたまうばかり。
「言っとくけど、手慣れたお宅様と違って、こっちは男子に呼び出されたりするキャラとかしてないんですけど。教室戻って、地味だけど女子には好かれる系の立場がなくなっちゃったら、どうしてくれるんですか。しかも、腹ペコ最高潮なのに、お弁当置いてきちゃったんですけど、今からでも、昨日の約束は記憶にございませんにしてもいいですか」
ずんずん先を歩きながら、見向きもしないで不満をぶちまけてやったら、さすがの鈍感君でも気がついてくれたらしい。
「教室まで行ったのは悪かったよ。昼も、おにぎりでよかったら分けるからさ、だから、どうか、なかったことにだけはしないでください」
気まずそうな枝幸は、マイバッグを揺らして拝んできた。
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