第二稿・千歳神威先生のアドバイザー始めました

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「とりあえず、言いたいことはわかったし、お昼もどうも。でも、教室の呼び出しって、あんま男子とか女子って関係なくない?」 「俺的には、ただの日常風景。普通に、用事なんだなとしか思えないんだけど」 「えー」 作家なのに、妄想力が働かないの? それとも、ファンタジーじゃないから反応しないとか? 「じゃあさ、例えば、唄ドラのユーリちゃんみたいな子が、おっきい胸の下で両手組んで、上目遣いの潤んだ瞳で『あのぅ、枝幸いますか?』って訪ねてきたら?」 「……いいな。あり寄りの有りだ」 「でしょー。私、常々、思ってたんだけど、きゅんするポイントって、かなりのところで男女共通してる説を推してるんだよね」 「いやいや、何をおっしゃる。男女差は確実にあるだろ。じゃなかったら、すれ違いの喧嘩なんて起こらないし、ラブロマンスも盛り上がらないだろ」 「その発想、すごく作家っぽい。でもさ、女子目線だからって、カッコいいだけが受けるわけでもないし、普段凛々しい男子が見せる、時たま可愛い瞬間にきゅんとくるのと、普段クール系女子が、たまーに見せる可愛さに萌えるのと、どっちもギャップにやられてるって意味では通じてるよね」 「うーん……」 「どっちも、普段と違う顔につけ込んでみたくなる心理を刺激されてるわけだから、同じでよくない」 「つけ込むって……弱ってるところを狙うわけだから、いわゆる、思春期にありがちな、好きな子に意地悪しちゃう心理?」 「その辺で言うなら、女子でも素直になれないのは盛り上がるよ。てか、そういう女の子が私的にツボ」 「それはわかる。わかりみしかない。え、でも、だったら、マジで男女差はないってことになるわけだけど、そこは、やっぱ違わないか?」 腕を組んで、一人唸りだした枝幸を放置して、由仁はパリパリとシーチキンマヨのおにぎりを堪能していたら、突然、隣で閃いたらしく首を回して主張してきた。 「浮気された時、男は浮気した女を恨むけど、女は浮気相手の女を恨む。これこそ、明確な相違点だろ!」 「気づかれたか。それ言われたら、反論できないなって思ってた」 閃きに大興奮の枝幸に由仁が冷静に返したら、実に不満げに睨まれた。 「一応、言っとくけど、個人的には、それも場合によりけりだと思ってるからね。なんか、女子目線を期待されてるとこ悪いけど、私、どっちかって言ったら、考え方が男っぽいっていうか、好きになるキャラもイケメンより可愛い女の子の方が多いくらいだから、リアルに浮気されたら直で相手を恨むかも」 「あ、もしかして、彼氏持ち?」 「なわけないじゃん。いたら、のこのこ、ついて来てない」 「のこのこって……でも、唄ドラだと、ぱっと見、筋肉美のクロムウェルがいいって言ってなかったか?」 「そうだけど、クロムはきゅんなときめきっていうより、兄貴っぽい逞しさがいいんであって、女子目線じゃないよ。そういう意味だったら、主役のラックの方が一途っぽくって好きかも」 「えー、難しいこと言うな」 「乙女心は複雑なんです」 「女子っぽくないって自称しといて、どっちだよ」 「どっちもあるの。枝幸君だって、乙女心は持ってるはず」 「んなこと言われてもなぁ」 「世の中、少女マンガ好きな男子とか、それなりにいるし、少年マンガなんて結構な割合で女子の人気が支えてるんだよ。好きに国境も性別もない」 「少年マンガの場合、腐女子込みの計算だろ。そこは絶妙に違う気がする」 「でも、どんな読み方するかなんて、腐ってなくても読者の自由でしょ」 「まーあ、それは確かに」 「だから、変に性別を意識するくらいなら、キャラらしさを掘り下げていく方がいいと思う」 「うぐぐぐぐぅ、ごもっとも。七飯って、マジで鋭いな」 「……なんか、うるさかった?」 「まさか。ぜんっぜん助かる。七飯こそ女子目線とか気にしなくていいから、七飯の目線でガンガン意見してくれたら、すっごい刺激されそう!」 「なら、いいけど」 やたらに目をキラキラして見られたら、ちょっと困るけど、ちょっと嬉しくもなる由仁だ。 その後も、あれこれ喋っていたらチャイムが鳴って、枝幸が慌てて手のひらで遊んでいたゴミを回収してくれて、お開きとなった。 「な、続き。話し足りないから、放課後に会えないか?」 おもいっきり廊下を走りながら、迷惑じゃないかな? って心配が顔に書いてある枝幸に聞かれた。 「いいよ。さっきのところで待ってて」 「うっしゃ! じゃ、後でな」 枝幸はわかりやすくご機嫌だったけど、悔しいことに、由仁だって楽しみだった。
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