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10.
「で、結局どういうことなんですか」
正志はバスに乗る前に手渡された名刺をためつすがめつしながら言った。
「スピリチュアル・カウンセラーの、くさか、おすうま、さん?」
「ゆうまだ。ローマ字で書いてあるだろ」
男……草加雄馬は、ちょっとムッとして訂正する。
地下鉄北二十四条駅周辺の、ファストフード店。仕事前に朝食を取る人々もおおかた捌けた、中途半端な時間。すいているのをいいことに、正志、美月、早希の三人が椅子を横一列に並べて座り、壁側の長椅子には雄馬だけが居心地悪そうに座っている。
話を聞こう、ということになったのは良かったが、その後が長かった。
いつまでも昇降口にいるのは寒いし、戸締りに事務員もくる。かと言って校舎内に入ったら余計に誰に見咎められるかわからない。正志は音楽準備室に行こうと提案したが、美月が見知らぬ(怪しい)男と個室に閉じこもることに強い懸念を表明したため、ボツ。手頃な店に行こうにも、近所にそんなものはない。じゃあ庭根駅近くまでバスで移動しようかということになったところで、早希が、どうせバスで移動するなら(明宏たちが向かったらしい)北二十四条に行った方がいいのではないかと言い出した。
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