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「だからって……カップルデンジャーだっけ、そんな荒唐無稽な話を信じろっていうの? 言いたかないけどさ、早希、あんた、明宏くんとあの子のこと、認めたくないだけなんじゃないの?」
「そう……かもしれないね」
目を伏せる早希。美月は顔を背ける。その耳に、ちいさく、だがきっぱりとした声が届く。
「でも、それでも、あたしは、もう嘘つきたくない。認めたくないなら認めたくない、その気持ちを、無視することなんて、できない」
長いため息をつく美月。
「わかったわよ。もともと早希の問題だもん、あんたのいいようにしなよ。あたしは付き合うよ」
「まとまったようなら、話を続けていいかな?」
「どうぞ」
不貞腐れたように言う美月に、雄馬は苦笑して、再び話し始めた。
「さて、ドッペルゲンガーってのが実際に、つまり科学の言葉でどう説明できるものなのか。それは俺にも分からない。専門外だからね。量子力学とか多世界解釈とか、そう言う言葉でドッペルゲンガーについて語っているのも聞いたことはあるけどね、俺が説明しようとしてもいい加減なことしか言えないと思う。ただ言えるのは、ドッペルゲンガー自体は本体と無関係ではなく、生命力や実在性における、「薄められた本体」のようなものらしい、ということだ。そしてそれが分離した分、本体の方も、必然的に「薄められて」しまう。パイ生地を剥がしたようなものと言えばわかりやすいかな。剥がれてしまえばどちらも薄く、脆くなってしまう。その結果が、『ドッペルゲンガーが現れるとまもなく死ぬ』という話、あるいは出現後にひどくやつれてしまうという現象、と言うことになるね」
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