7人が本棚に入れています
本棚に追加
「一応聞くけど、なんらかの確証があっていってるんですか?」
美月が聞くが、先程までの勢いは既にない。
「個人的には、それなりの経験の蓄積はある。証明できるかと言われると、信じてくれと言うほかないな」
「あ、そうですか、はい」
投げ出すような美月の返事に再び苦笑を浮かべる雄馬。
「あ、俺も、いいですか」
と、正志。雄馬は無言で頷く。
「ええと、だいたいのとこ理屈は分かりましたけど……さっき言った通り、あの女の子は、俺たちの友人である男と一緒にいるわけですけど……性別が異なるドッペルゲンガーってありうるんですか?」
「稀だがあり得ないケースではない。パイを剥がしたって均等に同じ厚みになるとは限らないだろう? 場合によっては途中で割れたり、穴が空いたりするかもしれない。それと同じで、人格のある部分だけに偏って分離が起こることは十分考えられる。どんな男も女の要素を持っているし、どんな女も男の要素を持っている。心の裡には異性に関する様々な知識や理想もあるだろう。そういったものを反映した、異性のドッペルゲンガーというのも、理論的には十分存在しうる。ある意味アニマやアニムス……ユングにおける、無意識の異性イメージが具現したようなものと言えるかもしれないな」
「それも経験から?」
「まあ、そうだ」
最初のコメントを投稿しよう!