12.

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 平日の、開店まもない時間とあって、人はまばらだ。中庭のような広場を抜けて建物の中に入ると、広いアトリウムがあって、その奥に。 「わあ」  少女が挙げた声に、明宏は満足げに頷いた。 「まあ、有名どころだとまずはここだよね。どう?」  少女は魅せられたように黙ってツリーのもとに歩み寄る。明宏もだまてそれに続いた。  高さ一〇メートル以上はある、天然木のクリスマスツリーだ。明るい光の中で、イルミネーションが灯るわけでもなく、それほど派手には見えないが、赤や銀、金色の球、あるいは星の形の飾りは十分にクリスマス感を演出しており、その大きさと相まって厳かさと楽しさの入り混じった感情を見るものの胸に掻き立てる。切って運ばれてきたものとはいえ、本物の木であることによるある種の素朴さも、そこには一役買っているようだった。 (改めて見ると……)  明宏は内心ひとりごちる。 (確かに、すごいなこれ)  そして横目で少女の様子をうかがう。  少女はなおしばらくキラキラした瞳でツリーを見上げていたが、やがて顔を曇らせ、悲しそうに首を振った。
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