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第一章 流転する運命
架空の世界、オーバリア大陸。エルセア暦という暦とともに歴史を刻むこの大陸には大きな勢力を持つ二つの宗教がある。
一つは大陸の東方や中央部を中心に多くの信徒を持つ一神教であるクレスト教、もう一つは大陸の西方を中心に信仰されている一神教イブラビ教。この二つの宗教は大陸の東西を隔てるように走るジェライ山脈と呼ばれる山々のために長年交わることはなかった。
エルセア暦四五八年、この平穏が破られる。西方大陸を中心に広大な版図を持つクフラヒド王朝が国教であるイブラビ教の普及という名目を掲げて隣接するジェライ地方に侵攻を開始したのだ。この動きを察知したクレスト教会はそれを止めるべく傘下のジェライ騎士修道会を送り込む。彼らはジェライ山脈の間にあるイェルー渓谷にてクフラヒド王朝軍を迎え撃つも、奮戦敵わず敗れ去った。
この勝利を皮切りに快進撃を重ねていくクフラヒド王朝。しかし、この侵攻は十三年にも渡る長い戦争の幕開けに過ぎなかった。
大司教殺しと蔑まれた堕ちた英雄トリスタン・ヘルムドール。コルヌの聖女と讃えられた修道女オデット・ローラン、裏切り者の烙印を押された騎士修道会グランドマスターのラヴィニス・ヘルムドール。これは宗教戦争によって引き裂かれた一つの家族の物語。
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