失恋タル 第2話

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長い髪に白いキャップを被った背の高い女性が、フィリピン酒場の壁にもたれ、ぼんやりと空を見ていた。 「初めまして。恋のレンタルの電話下さった方ですよね?」 「あ! まさか本当に来てくれた?」 「本当に来ました。いけませんか?」 「いえ、あの、ポスターの人ですか?」 「そうです」 「写真より細いですね」 「そうですか? 写真に身体はほとんど写ってなかったはずですが・・」 「そうだった? 電話したのは鏡の中の私だから。私は、恋とか無理。絶対、ゼッタイ無理だから。あー、やだ。あなた、真面目に恋をレンタルできると思ってんの? 狂ったの? 初めから変人なの?」 「どうでしょう。俺、西 (たくみ)です。あなたのお名前は?」 「カナちゃん、よ」 「カナちゃん、か。カナちゃん、どうしましょうか? 恋のレンタル、キャンセルします? キャンセル料はいただきませんから。実際に会って、俺と一緒に過ごしたくないと思ったなら、遠慮なくキャンセルして下さい」 「どうして、そんな冷たいこと言うの? 私が勝手にキャンセルしたりしたら、鏡の中の私は、ショックで死んでしまうかもしれない。あ、3万円か、先に支払うんだっけ?」 カナちゃんは、無造作にジーンズのポケットから折り畳んだ裸の1万円札を出して俺に手渡した。
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