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***
2日後。
放課後、例のアンティークショップに行ってみる。
ドアを開けると、あの太った店主が「あぁ、いらっしゃいませ、ぼっちゃん」と少しかすれた声で声をかけられた。
この間と変わらないボタンが飛びそうな、薄汚れたシャツを着て、重たそうに椅子に座り直す。
「あの箱のレンタルに来たんですけど」
「すみません、坊っちゃん。今借りているお客様が、返しにこないのです。もう1日だけ待って貰えますか?そのかわり、レンタル料を1日50円に致しますし、何かオマケをおつけします」
「そうなんですか。分かりました」
僕は小さく頭を下げて、店主にペコリと頭を下げて、背中を向ける。
「食べられていないといいのですが」
「え……?」
僕が振り返ると、店主は口を大きく開けて笑い、二重顎をタプタプさせた。
「いやいや、何でもございません。ハハハ。必ず明日には、お貸しできますので、もう一度お越しください。誠に申し訳ない」
「はぁ…」
そんなに夢中になる箱なのか?と不思議に思いながら店を後にする。
それに。
"食べられていないといいのですが"
そう聞こえたような気がした。
箱が美味しそうで、その客が食べてしまいたくなる?
それとも、箱が。
……まさか。
俺は、頭を左右に振ると、駅に向かって歩き出した。
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