魔法の箱貸します

3/10
前へ
/10ページ
次へ
*** 2日後。 放課後、例のアンティークショップに行ってみる。 ドアを開けると、あの太った店主が「あぁ、いらっしゃいませ、ぼっちゃん」と少しかすれた声で声をかけられた。 この間と変わらないボタンが飛びそうな、薄汚れたシャツを着て、重たそうに椅子に座り直す。 「あの箱のレンタルに来たんですけど」 「すみません、坊っちゃん。今借りているお客様が、返しにこないのです。もう1日だけ待って貰えますか?そのかわり、レンタル料を1日50円に致しますし、何かオマケをおつけします」 「そうなんですか。分かりました」 僕は小さく頭を下げて、店主にペコリと頭を下げて、背中を向ける。 「食べられていないといいのですが」 「え……?」 僕が振り返ると、店主は口を大きく開けて笑い、二重顎をタプタプさせた。 「いやいや、何でもございません。ハハハ。必ず明日には、お貸しできますので、もう一度お越しください。誠に申し訳ない」 「はぁ…」 そんなに夢中になる箱なのか?と不思議に思いながら店を後にする。 それに。 "食べられていないといいのですが" そう聞こえたような気がした。 箱が美味しそうで、その客が食べてしまいたくなる? それとも、箱が。 ……まさか。 俺は、頭を左右に振ると、駅に向かって歩き出した。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加