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***
次の日。
僕は再びまたアンティークショップのドアを開けた。
相変わらず、埃っぽいし、不思議な香りが漂っている。
「やぁ、いらっしゃい。サラマドル、返却されましたよ」
頬骨の肉を持ち上げ、僕がまたきたことを喜んでくれているようだ。
「これが、願いが叶うサラマドルの魔法の箱です」
茶色の木箱だと思っていたが、それは白く、丁寧に細工の模様が施され、とても綺麗だ。
店主は、それを細かく丁寧に拭いていた。
「日本にも同じように細工箱がございますね。それと同じ要領で、板を色々とスライドさせて最後まで開けられれば、願いが叶うと言われています」
「……おじさんは、これを試したらことがないんですか?」
その質問に、ハハハと笑った。
「私は、商品を売る単なる商売人ですから、やった事はございませんよ。アンティークなので、開けたと言われる方も、昔々の話なので実は私は噂でしか知らないのです。しかし、開けた方々らは、大金持ちになったとか…あるいは望み通りの願いを叶えたとかなんとか…」
「お金持ちか…」
僕もお金持ちになりたい。
この箱さえ開けることができればお金持ちになれる。
「坊っちゃんには、約束通り1週間50円のレンタル料と、あとこちらをおまけでお渡しします。何となく私が坊っちゃんを気に入りましてね。最近の若者にしては、とてもきちんとした振る舞いで。ご両親がさぞご立派なのでしょうな」
「いや、そんなことはない…ですけど。でも、ありがとうございます」
「はい、こちらです」
店主のパンパンのソーセージのような指で机に置かれた。
それは、固くて赤黒く、三日月のような形をした石だった。
「必ず1週間後に持ってきて下さい。スライドに失敗して閉まらなくても、そのままお持ちしていいですからね。最後のスライドが開いた時、中に入っている白い石に願い事を言ってください。でも、万が一、思っても見ないことが起こった時は、箱の上や開いた箱の隙間に、この三日月を置いてくださいね。必ず。
それが唯一失敗しても助かる方法なので」
「失敗?開かないのはともかく、失敗すると何か起こるんですか?」
店主は白髪頭を掻きながら、フフフと笑う。
「私もこれをした事がないので、言えることはここまでです。怖いですか?やめておきますか?」
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