魔法の箱貸します

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が、あともう少しの所で開かない。 箱を傾けると、白い石が少し見えた。 しかし、石を出せる程の隙間は開いていない。 色々とスライドして試したが、また動きが止まってしまった。 やはり、そう簡単ではない。 一旦休憩する。 椅子の背もたれに、だらりともたれながら箱を眺めた。 この白い箱もなんだか今まで触ったことのないような質感だけど…何で出来ているのだろう。 蓋が開いたらどんな感じで願いが叶うのだろう。 再び箱を手に取り、少しだけ開いた所から、僕は中を覗いた。 暗い所に白い石が見える。 なんとか触ってみたい。 小指の先くらいなら、入るかも。 グイと小指を穴に入れて石を触ろうとしてみた。 「!!!」 すぐに小指を引っ込める。 「いっ…て!」 小指の先からぷっくりと血が滲んでくる。 ティッシュで拭くと、小さな楕円形になった穴が何ヶ所も開いている。 歯形だ。 しかも、人間のような歯形。 もしかして、小さな人間のような生き物がいるって言うのか? じわじわ出てくる血をティッシュで押さえながら、ゾッとする。 願いを叶えるためには、簡単に取れないように怖い事もあるっていうのか? ……クソ! 一体どんな奴が入っているんだ!? 一旦その箱の中身を閉めようとするが、どうやって閉めるか、わからない。適当に板をスライドさせていたからだ。 店主がくれた三日月型の赤黒い石を思い出す。 もしかして、今が使う時か? しかし、もっと箱が開いた時に使うのかもしれない。 焦るほど、箱は言う事を聞いてくれない。 なかなか蓋が閉まらない。 俺はとりあえず、紙袋に箱を押し込み、きつくガムテープを貼った。
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