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化け物は、その三日月を目に見えない速さで持っていってしまった。
見ようにも見えない…
しかし、硬そうに見えたあの三日月の石を、化け物が咬みちぎっているようだ。
何故なら咀嚼音が聞こえる。
まるでジャーキーでも食べるように三日月を食いちぎっているところを想像して、ブルっと震える。
ダメだ、完全に開かないとあいつは白い石を手放さない。
いや、開いたとしても、もう三日月はない。襲われる可能性がある。
あの化け物が襲ってきたらどうする?
僕は再び箱を紙袋へいれて、封をした。
もう5日だ。
あと2日しかない。
あの店主。ヒントをくれないかな…
***
次の日、アンティークショップを訪ねて、店主に今の状況を話した。
聞いた店主は、パチパチと手を叩き、うんうんと頷く。
「そこまで開ける事ができたのですか。素晴らしいですね。でも、前にもいいましたが、私はあの箱を試した事がありません。申し訳ないんですが、本当にヒントを申しあげられる程、開け方については知らないのですよ。にしても、指を少し咬まれただけで良かったですねぇ。あの化け物は、なんでも食べてしまうらしいですから。特に私がお渡しした、あの三日月の形の肉が好きなんですよ」
「あれが肉!?すごく硬くて、石みたいでしたけど!」
「…特殊な加工をした肉なので」
フッフッと店主が笑う。笑う度、二重顎の脂肪が揺れた。
「一体何の肉なんですか?」
店主は片眉をあげて、僕を見ると、肩を上げて首を振る。
「聞かない方がよろしいかと」
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